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堕ちながら見る夢

……すみません、ぶっちゃけうちのジャンルのどれにも掠っていないジャンルです。
というか、過去ジャンルでございます。

今日本棚の移動で全部本を引っ張り出したら、昔買っていたこよなく愛していた作家さんの本が見つかりまして。
それを読んでいたら、昔書きかけで止めてしまった話があって、どうにも書きたくなったので突発的に。
お陰で部屋の中、とんでもないことになってるんですがまぁいいや(笑)。←いいんかい!

秦合です。
加合より大好きでした。むしろ本命でした。次点で又合。


秦野組長と合田刑事をご存知の方はどうぞ。




人気のない、暗い道だった。
一定の距離で連立する街路灯。
建ち並ぶ、住宅街。
その道を通りながら、合田は手が無意識に震えるのを感じた。

───これから自分は何をするつもりなのか。

出世欲もなければ、特にそうしたからといってどうとなるわけではない。ただ、今まで培われてきた刑事根性とでもいうのか、行く手の塞がる事件の全てを暴かないと気がすまないという下手な理由からだ。

一週間前に殺された被害者は組織の者だった。
その数日後にその男のイロだった女まで殺され、桜田門に捜査本部が立ったのだが、早三日にしてどうにも立ち行かなくなった。
刑事も長くやっていると、独自の情報網というものを持っている。
それに引っかかったのが秦野組だった。
組長と刑事が馴れ合っていれば、立派な不祥事だ。
しかも相手はヤクザで、情報の取引をするとなると何処まで足元を見てくるか判らない。
斜め掛けにかけた革の鞄に出来る限りの金を用意し、合田は指定したホテルへと向かった。

地下鉄に乗り、ドアに背を預け車内を見渡す。
夜の十時も過ぎる頃なのに、車内は混みあっていた。会社帰りのサラリーマンの姿、OLの姿。幾多の混ざった香水の匂いに吐き気がした。
緊張からなのか、喉がやたらと渇く。
自分が見える限り顔を眺めて、後をつけられていないかを何度も確認した。
これでは犯罪者と変わりない。
合田は内心自嘲する。
借りを作ってはいけない相手に会ってまで、自分は何を必死になっているのか判らなくなってきていた。

人並みに紛れ目立たぬようにして向かったのは、名の知れたシティホテルだ。秦野に指定されたそれを仰ぎ見て、ぐ、と睨んでからエントランスに足を踏み入れる。
フロントに人と会う旨を伝え、丁度来ていたエレベーターに乗りながら合田は秦野の顔を思い出していた。
秦野と出会ってからもう何年も経つ。
その時も事件絡みで、初めて間近に見た秦野の印象は蛇だった。
一つの大きな組を構える男となれば、どれほどの汚濁に塗れているのか容易に想像できる。一度捉まったらそう易々と縁切り出来ないだろうと合田は思った。
しかし今。
切りたがったその縁に縋っている自分がいる。

静かな廊下の一番奥の部屋だった。
小さくノックをすると、間を置いて重厚な戸が開かれる。
どことなく顔色の冴えない合田を見て、秦野が小さく笑んだ。

「なんて顔してるんですか。ここに呼び出したのはアナタでしょう」

「何でもありません」

「思いつめた表情のアナタもいいものだ」

様々な事態を想定して表情を強張らせた合田に、秦野は笑みを深めて身を横にずらす。一度ちらと背後を盗み見て、横をすり抜けて部屋へと入った。
流石、スィートルームだけある。
毛足の長い絨毯が広い部屋に敷き詰められ、品のいい調度品と揃いのソファーとテーブルが置かれていた。二間続きの向こうはベッドルームのようだった。
ソファに腰掛けるよう促した秦野が、括りつけのキャビネットから酒の瓶を取り出した。

「何飲まれますか?」

「結構です」

「そう言わずに。少し舌の滑りを良くした方がいい」

視線を流しながら笑んだ秦野が、傷一つないグラスに琥珀色の酒を告ぐ。合田の薄給では到底手の出ないような代物だった。
……やはり、来なければ良かった。
臓腑が重くなるほどの後悔を味わいながら、白いスニーカーの紐を見つめる。逃げ出したい気分に駆られる体を、ぐっと堪えた。
電話をかけた時点で、覚悟していたことだ。
ここまで来てしまったなら、用件も言わずに帰ることなど不可能だから。

「……で、ご用件は?」

合田の前にグラスを置き、向かいのソファに座った秦野が真っ直ぐに見つめる。この期に及んでまだ逡巡する気持ちを捩じ伏せ、口を開いた。

「貴方から情報を買いたい」

「ほう。懲りてないのか、余程余裕がないのか。で、それなりの見返りはご用意していただけたんでしょうね」

上目遣いで見る秦野の前に、肩から外したバッグを置いた。

「……生憎、私が用意できるのはこれしかありません。貴方には足らない額かもしれませんが」

ちらとバッグを一瞥し、低く喉元で嗤う男を見て背中に嫌な汗が伝った。手の中のグラスを揺らし、それを一口含んだ秦野が口の端を吊り上げる。

「二度目、ですよ合田さん。あたしがはした金で情報を売るような男じゃないくらい、あなた既にご存知でしょう」

その一言にぐっと言葉を詰まらせ、合田はテーブルの模様を睨んだ。
この前に取引をした時は、秦野に賭博をさせられた。
その時も有り金全て持って行ったのだが、それら全て失っただけではなく借金までする羽目になった。その記憶もまだ生々しいが、秦野以外に有力な情報を持っている人間が居ないのが運の尽きだ。
───知り尽くしている、嫌というほどに。
筋者の、独特のやり方だ。

「───でも、俺はこれで貴方に頷いてもらうしかない」

「あたしがこの前に言ったことを憶えてらっしゃいますか」

「何」

「あなたがその歳まで生きてきて何もないと言うのなら、質草はあなたの体だと言ったはずです」

すっと細められた目に、体が竦む。

「……何が目的なんですか」

「今回初めてですし……、文字通り、あなたの体を貰いましょうか」

すっと席を立った秦野が、ネクタイを緩めながら合田の隣に腰掛ける。咄嗟に身を引いたその華奢な顎に長い指をかけ、間近に眸を覗き込んだ。

「合田さん、あなたあたしから情報を買うつもりなんでしょ?抱かれるくらい何てことないはずだ。それとも、そんな半端な気持ちで来たんですか」

その言葉に合田は目を逸らした。
図星だ。
一回金でケリがついたからまた今度も、とは随分と甘い考えだったと自分でも思う。しかしまさか秦野の要求が本当に言葉通りだとは思わなかった。
こんなくたびれた刑事を抱きたいと思う酔狂が、この世に存在するとは思うはずもなく。
合田は眉を顰めて目を伏せた。
体の関係を持つことよりも警察内部の情報を漏らせと言われることの方が、もっと深刻な問題だと判断した。
ちら、と秦野を見て小さく呟く。

「……酔わな、無理や」

低くとも柔らかな合田の関西弁に、秦野がおや、というように方眉を上げる。そして手の中のグラスの酒を一気に呷り、添えたままの指で顎を掬い上げて口付けた。
隙間なく重ねられたそこから、酒が流れ込んでくる。
喉を焼くそれを飲み下した頃に忍び込んだ舌が、縦横無尽に口腔内を犯した。

「……ん……っ」

幾度も角度を変えながら、柔らかなクッションの上に押し倒される。
背中に腕を回すこともできず上質のスーツジャケットを握り締めた合田は、ふわりと薫るコロンの匂いに眩暈がした。
思うが侭に舌を絡めた秦野が、漸く唇を浮かせて微笑む。

「思ったとおりだ、あなた素質がある。キス一つでそんな表情が出来るとは……」

気に入った、と囁いて、ゆっくりとシャツのボタンを外していった。



思ったとおり、秦野の愛撫は執拗だった。
肌をくまなく穢す唇、艶かしく這い回る指先。
男を抱いた経験があるのか、秦野はひどく巧みだった。

「……あぁ……っ」

合田が初心者であることを見越して、奥を解す時間をかけて昂ぶった雄に舌を這わせる。男にしては華奢な体が小さく跳ね、噛み締めた唇が解けて嬌声が零れた。

「合田さん、もっと脚を開いて」

「や……っ、いやや……ァ……っ」

「我侭な人だ」

浮かされた合田に苦笑して強引に脚を開かせると、猛った雄をそこに押し当てた。

「ほら、力を抜かないと辛いのはあなただ」

「む、りやっ、そないなもん、入らへんぞ……っ」

「入らないんじゃなくて、入れるんですよ」

ぐっと押し入ってくる感覚に、合田は組み敷く男を見上げる。
狭いソファにも拘らず、タイを解いただけでスーツの上着すら脱がない姿に悔しさのような感情が沸き起こった。

「───ひ……っ!」

突き抜けるような痛みに思わずきつく目を瞑る。
掴む拠り所のない手で秦野の腕を掴んだ指が、強く爪を立てた。
狭い器官を押し入ってくる熱が奥まで収まり、やがて緩急つけながらの律動に揺すり上げられながら、合田はただひたすら時間が過ぎることだけを祈った。



時間は深夜を過ぎている。
情報を聞き出した合田が帰り支度をしていると、秦野がその体を背後から抱きすくめた。短い髪から覗く形のいい耳に唇を当て、余韻を滲ませた声で囁く。

「来週の金曜日、あなたここに来れますか」

次を思わせる言葉に表情を強張らせ、視線を流した合田に浮かべた秦野の笑みは残酷なものだった。

「まさか一回で終わると思ったんですか。あたしが提供した情報がどれほど際どいかあなたはご存じない。たった一回で誤魔化せるほど、甘いもんじゃないんですよ」

「あんたに迷惑をかけることはせぇへん。せやから……」

「断ったら……あなたはあたしのものですよ」

笑んだ唇が耳元に口付け、すっと腕を解く。
バッグを乱暴に掴んで部屋を出ようとする背中に、追ってくる声。

「来週の金曜日、今日と同じ時間でお待ちしてますよ」

合田はそれに答えず、振り切るように部屋を出た。
長い廊下を小走りで抜けながら、自然と息が上がる。
───どうしたら、いい。
自然と体が震える。
先を考えるだけで、あるのは闇に覆われた絶望だった。



>>続


コネタどころかかなり大ネタ。しかも昔過ぎてオチ忘れてらぁ。
でも何か懐かしい(笑)。秦野組長大好きだ!コミックは微妙だったがな……!


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